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大石 栄一

 結晶中の原子は熱振動しており、このような振動のことを格子振動と呼びます。そして、格子振動のエネルギー量子はフォノンと呼ばれ、固体物理の参考書を開けば、エネルギーと(結晶)運動量をもつこと、熱伝導や熱拡散といった熱物性を担っていることが載っていると思います。一方、近年になって、フォノンがエネルギーと運動量だけでなく、角運動量をもつことが明らかになりつつあります。角運動量をもつフォノンは、具体的には原子変位が回転運動をともなう格子振動に対応します。角運動量をもつフォノンの中でも、運動量をもち結晶中を伝播するものを「カイラルフォノン」と呼びます。このようなフォノンは、らせんの結晶構造をもつα水晶のようなカイラル結晶に存在しており、私は円偏光(スピン角運動量をもつ光)をもちいたラマン分光によって、このようなカイラルフォノンを観測する研究を行っています。

更新日 : 2025.04.12