私は物性物理学の中でも強相関量子系と呼ばれる系の理論的研究を行っています。そこでは膨大な数の原子や電子といった量子力学的な構成要素が強く相互作用を及ぼし合うことで、高温超伝導(非従来型超伝導)や量子スピン液体などのように、元の構成要素だけからは全く予想のつかない特異な量子多体状態が発現します。相互作用の強い量子多体系の理論的取り扱いは一筋縄ではいきませんが、だからこそ未知の機能性と新展開へのブレイクスルーが豊富に眠っていると思います。強相関系の種々の物質が示す多彩な性質とそれらの発現機構を量子多体問題の観点から解き明かし、物質・材料を通して世界を変革していくことが主な目標です。超伝導体や量子スピン液体で発現する特異な準粒子が、ノイズに強い次世代の量子コンピュータへの応用面で期待されているように、強相関量子系で創発する新奇な量子多体状態の解明を押し進めていくことが、将来的にSDGsやSociety5.0の実現といった世界や日本の抱える社会的課題の解決にも大きな進展をもたらすと確信しています。