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平野 史朗

我々の身の回りでは、割り箸のように固体が引っ張られて開くという破壊現象が多く見られます。それに対して多くの地震は、岩石が圧縮され、形成された亀裂面を堺に岩石同士が摩擦を生じながら滑るという破壊現象であると考えることができます。

このように少し変わった破壊現象である地震の姿は、現場が地球という不均質でスケールの大きな領域ゆえに、極めて限定的な形でしか観測することができません。この不足を補い、また観測結果を統一的に解釈するためには、単純なモデルを用いた理論的研究が有効となる場合があります。

そこで私は、物性や力が不均質な場において、地震時に断層がどのように破壊しエネルギーを解放しうるのか…という問題を、偏微分方程式や特異積分方程式などを頼りに、数理モデルの観点から取り扱っています。このアプローチのためには弾性波・破壊・摩擦などにまつわる個々の理論の相互作用を考える必要がありますが、極力単純な理論だけの組み合わせからでも様々な数学的問題が生まれ、現象が示唆されるところに、世界中で多くの理論研究者が興味を惹かれ取り組んでいます。

更新日 : 2022.06.25