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森 正樹

宇宙の観測には古代から目に見える光(可視光)が用いられてきましたが、20世紀後半に入って電波や赤外線、紫外線、X線、ガンマ線という目に見えない光をとらえる技術が発達し、これらの光で宇宙を観測するようになると、可視光では全く見えない様々な天体が思いもかけない形態で存在することが次々に明らかに なってきました。

特に、最も波長の短いガンマ線は、重い星が進化の最期に大爆発を起こした後に残される超新星残骸、周期的なパルスを放出し中性子星とされるパルサー、中心に巨大ブラックホールを持ちエネルギー源とする活動銀河核など、最も活動的な高エネルギー天体の研究に適しています。これらの天体では電子や陽子が高エネルギーまで加速され、地球に降り注ぐ宇宙線の源になっていると考えられますが、周辺の放射や物質とのこれらの粒子の相互作用からガンマ線が発生します。ガンマ線は磁場に影響されずに直進し、その到来方向が発生源の方向を保つため、これらの粒子加速現象の研究にはうってつけの探針といえます。

天体からのガンマ線は、大気の厚い層のために、地上では直接観測できません。人工衛星に搭載した粒子検出器や、ガンマ線シャワー現象からの光を通してガンマ線を間接的に観測する地上ガンマ線望遠鏡(チェレンコフ望遠鏡と呼ばれる)を用いる必要があります。これらの観測データは粒子・光検出器を用いて電子的に蓄積され、雑音現象を除去するなど、コンピュータを駆使した解析技術を利用してガンマ線の信号を引き出します。その信号のエネルギー分布や時間分布などの情報を用い、発生天体における高エネルギー現象を解明していきます。【個人のページ

更新日 : 2022.08.09