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和田 浩史

私の専門分野は物理学と他の科学が交わる領域にあります。あえていうと、ソフトマター、生物、流体、非平衡現象の物理学になりますが、流れや変形の関わるマクロな自然現象全般に強く惹きつけられて研究をしてきました。とくに最近はバクテリアから植物まで、生物界にみられる多様なかたち(form)と動き(motion)を生み出すメカニズムに強い関心を持って研究に取り組んでいます。どのような生命現象も、その系がもつ対称性や保存則(質量保存や力のつりあい)といった基本的な物理法則を破ることはできません。逆にいうと、そのような少数のマクロな物理法則にもとづいて、いっけん複雑な生命現象のある側面がすっきりと理解できることがあります。物理学(とくに力学)と幾何学をよりどころとして生命現象の謎に挑む科学精神は、ダーシートムソン以来の歴史ある分野ですが、近年ますます輝きを増す科学のフロンティアです。このような試みを通じて、決してくみ尽くすことのない豊かで深い古典物理学の世界観を体験することも楽しみのひとつです。それは、物理学の案内に導かれて、生物に限らず我々を取り巻くありふれた日常現象に思いがけない発見や驚きをみいだすことです。学生の皆さんにはこの物理科学科での学びを通じて、世界の成り立ちについてなにかを教えてくれる新鮮な景色に出くわしてほしいと思います。

更新日 : 2022.06.25