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吉岡 潤

主に液晶の研究をしています。液晶と言うと、液晶ディスプレイのことを思い浮かべる方が多いかと思いますが、これに使われている物質が私の研究対象です。液晶という言葉は「液体結晶」に由来するもので、それが示す通り液体と結晶の中間の状態を指します。そのため、液体のような流動性と結晶のような秩序性を両方併せ持ち、この二面性こそが液晶の一番面白いところだと、私は思っています。

液晶は、電場、磁場、温度勾配といった外場に敏感に応答します。例えば液晶ディスプレイでは、電場のオンオフによる液晶の構造間のスイッチングを駆動原理としています。また、電場や温度勾配によって液晶中に定常な流動が誘起され、それによって新たな構造が発現、安定化するという現象も報告されています。少し俯瞰的に見ると、こういった構造は外部とエネルギーのやり取りをしながら形成、維持されているとみなすことができ、散逸構造と呼ばれます。この散逸構造の究極例としては、恒星、ガス惑星、銀河といった宇宙系の諸構造や、あらゆる生体構造が該当します。こういった散逸構造を物理的に記述する手法は未だよく確立されておらず、現代物理学の課題の一つとされています。この課題に対する糸口が、液晶系における散逸構造から得られないだろうか、と考えつつ日々液晶の実験をしています。

更新日 : 2022.06.25