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層状複水酸化物が水中で示す硝酸イオンに対する“好き嫌い”の機構を解明

島根大学総合理工学部の笹井亮教授、田中宏志教授、藤村卓也助教、広島大学大学院先進理工系科学研究科の森吉千佳子教授、立命館大学理工学部の藤井康裕講師、大石栄一さん(是枝研 D3)、高輝度光科学研究センター回折・散乱推進室の河口彰吾主幹研究員らの研究グループは、構成金属であるニッケルとアルミニウムの構成比を変えることで硝酸イオンを水中から選択的に除去できる能力をもつ層状複水酸化物を開発し、その能力が海水のような他の陰イオンが大量に存在する状況でも有効に働くことを明らかにしました。

この層状複水酸化物が水中で示す硝酸イオンに対する“好き嫌い”(硝酸イオン選択性)は、塩化物イオン、硝酸イオンおよび水和水が層間でどれくらい自由に動くことができるかという性質の差によって説明できることをつきとめました。層状複水酸化物は、層間の塩化物イオンと水中の硝酸イオンが交換することで硝酸イオンを除去しますが、その様子も放射光X線を用いて時々刻々観察することに成功しました。さらに、様々な陰イオンが多く含まれる海水中でも実験を行い、層状複水酸化物の硝酸イオン選択性が海水中でも維持されることを明らかにしました。このニッケルとアルミニウムからなる層状複水酸化物は、ニッケルとアルミニウムの構成比を整えることで、様々な水環境から富栄養化の原因物質の一つである硝酸イオンを選択的かつ高効率に除去できることから、SDGs、特に6(安全な水とトイレを世界中に)と14(海の豊かさを守ろう)などを実現できる革新的材料といえます。
詳しくは、本学プレスリリースをご覧下さい。

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書誌情報

R. Sasai, T. Fujimura, H. Sato, E. Nii, M. Sugata, Y. Nakayashiki, H. Hoashi, C. Moriyoshi, E. Oishi, Y. Fujii, S. Kawaguchi, H. Tanaka, Bull. Chem. Soc. Jpn. 95, 802 (2022) .
https://www.journal.csj.jp/doi/abs/10.1246/bcsj.20220032
DOI: 10.1246/bcsj.20220032
(オープンアクセス)

更新日 : 2022.07.01