物質の性質は、ほとんどが物質中の電子の性質で決まっています。例えば、ガラスが透明なのは、ガラスの中の電子が光をほとんど吸収しないからです。電子は原子核の周りを回っていますが、自転もしていて、この自転のことを「スピン」と呼びます。鉄は同じ向きのスピンを持つ電子が多いために磁石になります。
ほかにも電子のスピンのために、温度を変えると金属が絶縁体に変わったり、実に様々な興味深い性質が現れるので、私たちはそのメカニズムを解明することを目的に研究しています。
物質中の電子の状態を直接的に知るために、紫外線やX線を物質に当てて、飛び出してきた電子のエネルギーを測定する「光電子分光(こうでんしぶんこう)」などの分光実験を、大学だけでなくSPring-8などの研究施設で行なっています。
レーザー分光法は、非常に高い周波数精度(=長い時間振動が消えない光)や非常に短いパルス(=一瞬だけ輝く光)が実現され、いわば「永遠から刹那まで」をも探索できるダイナミックな実験手法であると言えます。当研究室ではレーザーを駆使した高精度な分光測定を通して、物質内部のさまざまな励起状態に関してそのエネルギーや寿命などの精密な情報を取得し、物性物理学においてこれまでに未解決な種々の問題に挑んでいきます。さらに、単に「観測すること」を超えて、レーザー光を用いて積極的に物質内部に特異な励起状態を創り出し、その励起状態を光で自由自在にコントロールする可能性をも探っていきます。このような光による物質状態の制御は、エネルギー輸送や通信といった、将来のさまざまな応用につながる重要な基礎を与えるものとなります。
レーザー分光物理研究室:https://www.kore-lab.org
宇宙に存在するさまざまな天体をとらえるには、目に見える光のみでは全く不十分で、電波からガンマ線にいたるいろいろな波長で観測して初めて明らかにされる現象がたくさん存在します。特に最も波長の短いガンマ線は、超新星残骸やパルサー、活動銀河核など、最も活動的な高エネルギー天体とそこにおける粒子加速現象の研究に適しています。人工衛星や地上ガンマ線望遠鏡のガンマ線観測データを用いて、これらの現象を解明していきます。【研究室のページ】
更新日 : 2022.06.30